今回は具体的な5S活動の進め方の3回目の「清掃」のステップです。
ここでは、清掃の意味・定義、メリットや効果、清掃と清潔の違い、進め方のポイントをご紹介していきます。
まず5S活動とは「整理 整頓 清掃 清潔 躾」の活動で、それぞれ次のような意味があります。
- 整理…必要なモノと不要モノとを分けて、不要なモノを処分すること
- 整頓…必要なモノを誰でもすぐに取り出せるようにすること
- 清掃…ゴミ・チリ・ホコリや汚れのないピカピカな状態を維持する活動
- 清潔…整理・整頓・清掃の3Sの活動を標準化し維持できている状態
- 躾……整理・整頓・清掃の3Sの活動が習慣化し、全員がしっかりルールが当たり前に守られている状態
最初の「整理」で要らないモノを徹底的に処分し、次の「整頓」で、それらを効率的に利用できるような仕組みを作っていきます。
以上終わったら次のステップが③清掃になります。
5S活動の清掃の意味・定義
5S活動における清掃の定義は「ゴミや汚れがない綺麗な状態を維持すること」を言います。
5S活動の清掃はなんとなく「掃除をする活動」ではありません。
重要なのは「誰がやっても同じクオリティのきれいな状態を維持できる」ことです。
「きれい」の感じ方は人によって違います。
ある人にとっては「きれいだ」と感じる状態でも、別の人によっては「汚い」と感じることがあり、奇麗の定義は人それぞれです。
感じ方・捉え方が違えば、掃除をやった時に、人によってクオリティにバラつきが出ます。
そうなると会社全体できれいになっていくことができません。
さらに人は基本的に楽な方に流れていってしまう習性がありますので、だんだんと「これくらいでいいかなぁ」と低い基準の方に合わせにいってしまいます。
すると徐々にきれいな状態が維持できなくなってきます。
そうならないために、まず誰が清掃しても同じクオリティになる客観的な「基準」を決めること。
そして、それが維持継続できるように清掃ルールを決めて、習慣化していくことが重要です。
5S活動の清掃と清潔の違い
5Sには「清掃」「清潔」があり、どう違うのか、知らない方は混乱してしまいます。
清掃とは、上記の通り「理想的に綺麗な状態を維持し続けること」を目的に、ルールや仕組みを作っていく活動のこと。
対する清潔は、整理・整頓・清掃(3S活動)のルールが決められ、守れるように「標準化」していく活動です。
5S清掃の目的と効果
何のために清掃を行うのか、その目的と効果・メリットについて解説します。
5S活動自体は、「安全」「効率的」「快適」な職場を作るために行うのですが、清掃もこれらの三つの目的にしっかりと貢献しています。
1.清掃が点検の役割を果たす
清掃には、点検の意味合いもあります。
機械などをきっちりと清掃することは、メンテナンスにつながります。
そして、日常的に清掃を行うことで、異常に気づきやすくなり、それが設備点検の役割を果たし、設備のトラブルを未然に防げるという効果があります。
2.品質不良を無くせる
清掃ルールを決めて日常的に行うことで、清潔な職場になっていきます。
それによって、汚れや異物混入などを防ぐ効果があります。
また、奇麗な環境は集中力を高め、ミスを減らし、能率を上げることにつながります。
その結果、品質不良を無くし、コスト削減やクレームを未然に防ぐことができ、生産効率を上げるというメリットを得ることができます。
3.労災事故を防げる
例えば、油で床が滑るなどの問題は清掃の徹底によって防げる可能性があります。
事故やケガのない安全な職場を作るためには、きれいなで衛生的な状態は必須です。
災害リスクを減らし、快適に仕事をするために、清掃は欠かせない活動となります。
4.会社の評価を高める
全く同じクオリティの全く同じ商品を作っている二つの会社があったとき、あなたはどちらと契約したいですか?
一方は汚れた工場、一方は清掃の行き届いたピカピカの工場。
よほど変わって人でない限り、右側の工場と契約したいと思われるはずです。
営業マンが身だしなみを気にするのと同じで、会社も身だしなみ次第で客様からの評価が良くも悪くもなります。
職場がきれいなだけで「従業員の教育がしっかりしていそう」「管理体制がいき届いていそう」という印象を持ってもらえます。
それがお客様の信頼材料となり、受注を増やす手助けになります。
実際に、私たちが5S活動のお手伝いをさせていただいている企業様でも、「5S活動を始めてから工場見学に来られたお客様との成約率が上がった」という声をいただいています。
5S清掃の進め方とポイント①清掃基準を決める
まず清掃する場所を全員でチェックして、「現状の清掃状態はどのような状態か?」しましょう。
その上で最初にすべきことは、会社として「どのような状態に持っていきたいか?」を話し合って決めてください。
例えば以下のようになるべく具体的に目標(理想の状態)を考えて下さい。
- ピカピカ(反射するくらい)
- 汚れがない(寝転んでも不快じゃない)
- 油汚れがない
- 土・泥の汚れがない
- 水アカ・ヌメリがない
- サビがない
- 臭いがない
- ホコリがない
- チリがない
- 目立ったゴミがない
現在どのレベルなのか?これからどのレベルを目指すのか?これらが清掃基準になります。
最終的には「床が反射するくらいピカピカな状態」を目指していただきたいのですが、職場によってはハードルが高いと思います。
まずは、「1年で目指せる範囲の目標」を決めて取り組み、1年後に振り返り、それが達成できたら一段階レベルを上げるとう風に、徐々にステップアップしていきましょう。
少し高めの清掃基準を設定するのがポイントです。
今すぐに実現できなくても、時間をかけて少しずつクオリティを上げていけるように挑戦してみて下さい。
5S清掃の進め方とポイント②清掃の仕組み化
清掃基準と目標が決まったら、今度は清掃ルールを決めて、綺麗な状態を維持する仕組みを作りましょう。
清掃ルールを決める
清掃は不定期ではなく、定期的・習慣的に行うようにしてください。
不定期だと忘れてしまったり、後回しになりがちになります。
できれば、短い時間でもいいので、毎日やるようにしましょう。
5S活動に取り組んでおられる会社様では、毎朝決まった時間を設けて、習慣的に取り組んでおられます。
こちらは福井県にある株式会社長田工業所様で毎日行われている「朝の10分間清掃」の事例です。
毎日一定の基準を維持し続けると、その状態が当たり前となって、「汚れると気になる」「掃除しないと気持ち悪い」という感覚になってきます。
これが5Sの清掃のポイントです。
そこで、毎日(定期的に)清掃が継続できるように、
- どの場所を?
- いつ?
- 誰が?
- どうやって?
- どれくらい綺麗にする?
というように、清掃ルールを細かく具体的に決めましょう。
清掃も効率化
本来の業務もありますので、清掃ばかりに時間を割くことはできません。
いかに短い時間で、いかに楽に奇麗にできるかも考得ていく必要があります。
そのためには、「なぜ汚れるのか?」を考えることから始めるのがポイントです。
まずトヨタの「なぜなぜ分析」を使って、汚れてしまう真因(根本の原因)を見つけ出してください。
動画では清掃についてのなぜなぜ分析の事例があります。
分析で真因が見つかったら、掃除方法や汚れない工夫をしていきましょう。
汚れない施策ができれば、掃除そのものが不要になる可能性もあります!
意味のない清掃がないかも含め、一度なぜなぜ分析に取り組んでみてください。
このように、業務同様、清掃を効率化していくことも5S活動の一環です。
清掃の仕組化(清掃マップ)
清掃ルールを決めただけでは、必ず忘れてしまいます。
清掃ルールが決まったら、それらを社員全員がわかり、忘れないように、張り出しましょう。
清掃マップにするのがおすすめです。
こちらは清掃マップの事例。
- 「毎週何曜日、何時から何時まで掃除を行う」
- 「この場所はこのクオリティを目指す」
- 「掃除はこのように行う」
というようなことを出来る限り明確にしてマップと表を使い明示して下さい。
清掃方法がわかりづらい場合は、写真やイラストを用いて、だれでもわかりやすいものにしましょう。
清掃チェックリスト
実際に決めたルール通りに清掃が実行されているかを確認、習慣化を促すために、清掃チェックリストも作成しましょう。
こちらは清掃ルールと、清掃チェックリストの掲示の事例です。
清掃はいかに継続できるかが大事になってきますので、まずは「きれいにすること」よりも、無理なく「継続すること」に重きを置いて計画的に実行しましょう。
整理も整頓もそうですが、5S活動の根底にある基礎は「ルールを決め、徹底して守ること」です。
全員がルールを守れるように仕組みを作り、守れなければその都度ルールを決め直し、情報をアップデートしていってください。