5S活動に取り組まれている会社では、定期的に「5Sパトロール」をされているところも多いと思います。
でも正しく効果的なやり方でやらないと、5Sの成果が出にくかったり、一部の社員さんに負担がかかったりということが起こってきます。
そこで、今回は「効果的な5Sパトロールのやり方」についてお伝えしていきます。
あなたの会社では、5Sパトロールはどのような形で行われていますか?
よくみられるのが「5S委員会のリーダーのみ」「役職者のみ」が5Sパトロールを行うといったパターンです。
リーダーや役職者のみが現場をパトロールして、問題があったらその部署に伝えて、指摘を受けた部署は次のパトロールまでに改善をする。
こういった流れて活動をされている職場が多いのですが、このやり方はあまりおすすめしません。
代表者のみが5Sパトロールするのが良くない理由
理由その①
「指摘されて改善する」というパターンだと、「指摘されないと動かない活動になってしまうから」です。
5S活動を全社員に浸透させるには、社員さん一人ひとりが「ここ整理できてないな」「ここ効率悪いな」と自分で気づいて、「じゃあここは、こんな風に改善しよう」とアイデアを出す習慣をつけることがとても重要です。
これが「指摘されて改善する」やり方だと、社員さんから気づく・考えるという機会を奪ってしまいます。
もし気づいていても「仕事忙しいし、指摘されるまではいいか」と考えるようになってしまいます。
その結果、5S活動はいつまでたっても「やらされ感」のままです。
理由その②
「指摘するポイントが偏ってしまうから」です。
どの会社でも5S活動を続けて改善が進んでいくと、だんだんやるところがなくなってネタ切れ状態になってしまいます。
ところがそんな会社でも、弊社で社内を見学させてもらうと改善するところはまだまだいっぱい見つかります。
「いつも同じ人が同じ場所を見ているだけ」だと、視点が少なく、意見が偏りがちになってしまいます。
上記2点を改善するためには、「全員で5Sパトロールをする」ことが最も効果的です。
5S活動が会社全体に浸透しない!リーダーだけが頑張ってる会社様へ
全員での5Sパトロールの進め方
よりよい改善活動を行うためには、全員でのパトロールを少なくとも毎月1回は行うようにしてください。
このパトロールの際は自分の部署だけではなく、工場や倉庫、事務所など他部署や共有部分も含む、含む社内全体を回るのが理想です。
このとき、独自の5Sチェックシートを用意するとより効果的です。
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「なぜ5Sを行うのか?」という目的があって、そのために「どこをどのようにチェックすればよいのか」というのを社内で明確にしておきましょう。
そしてパトロールの後、全員でディスカッションする時間があるとより効果的です。
そこではパトロール中に気づいたことを共有しましょう。
他の部署のことであっても、どんどん伝えるようにしてください。
毎日同じ場所で働いていると環境に慣れてしまって、どこが悪いかが見えなくなってきます。
自分では「この部署はもうこれ以上改善する場所がない」と自信を持っていても、他の部署の人が見たら改善場所は見つかるということがよくあります。
逆もまた然りです。
「他の部署の客観的な視点」というのは、改善活動においてとても貴重です。
これを1年間続けて、慣れてくれば3ヵ月に1回ペースでも改善は進むようになっていきます。
全員でパトロールを行うメリット
社員の気づきが増える
社員全員でパトロールをすると、これまで気づかなかった問題が見えてきます。
会社全体を見て回ると、「前後工程での効率の悪い部分に気づく」など、業務上の改善点も見えてきます。
「気づく力」が育ってくると、そうやってパトロールを繰り返すことによって、社員さんの感性が鋭くなっていき、社内の些細な問題にも気づくようになっていきます。
問題に気づく、異常に気づく、原因に気づく、相手の気持ちに気づくなど、色んな事への気づきの感度が高まってきます。
弊社で実際にあった事例だと、それまではゴミが落ちてても気にも留めない、見て見ぬふりだった社員さんが、5S点検を続けるうちに、いつしか自然と自分からゴミを拾って捨てるようになったという経営者様からの嬉しい報告がありました。
「社員の感性」は「モノづくりの姿勢」に比例していると言われていますので、この気づきの積み重ねはとても重要です。
この方法で5S活動を進めていくと、だんだん指摘されなくても、自分たちで積極的に改善活動していけるようになります。
他部署や他の業務について知れる
社員さんの中には、自分の現場のことしか知らないという方も多いと思いますが、この5Sパトロールで定期的に社内をくまなく点検することによって、
これまで関わることのなかった部署や業務や行程について知る機会ができます。
他の工程や他の業務を知ると、「自分の部署ではこういうやり方にして次の工程に渡してあげた方が効率が良いのでは?」というように、より俯瞰で業務改善を考えられるようになってきます。
他部署の改善から刺激を受けられる
改善が進んでくると他の部署のを見たときに、いい5Sのアイデアを発見できます。
すると「うちでもあれやろう」と、自然にアイデアが社内に展開していきます。
部署同士でお互いにアイデアをパクり合っていくことで、どんどん改善も自主的に進むようになっていきます。
手を抜いているのがバレやすくなる
全員で全部署を点検していると、ここは頑張っている、ここはサボっているというのが全社で把握できるようになります。
サボったり改善が遅れているとすぐにバレてしまうので活動が止まりにくくなります。
5Sの「しつけ」にたどり着くために
5S活動は本来「社員一人ひとりが自主的に気づいて活動する」のが最も理想的です。
5Sの「躾(しつけ)」とは、社員全員がルールを守り、無意識に5Sを行っている状態のことです。
これは社員一人ひとりが会社の乱れや汚れ、非効率なところに気づいて改善を行ったり、危険を素早く察知して対策を講じる、こういったこと当たり前にできるのが「躾」の状態です。
「言われたことをやる」といった受動的な活動では、この「躾」まではたどり着きません。
大事なのは「社員一人ひとりが『気づく力』を持つこと」です。
それを得るには「全員で定期的に社内を点検する」というのが最も効果的です。
まとめ
最後に5Sを定着させて効果を高めるパトロールのやり方をまとめますと
- 月に一度社員全員でパトロールを行う
- パトロールは自部署だけでなく社内全体を回る
- 5Sチェックシートを使用する
- パトロールのあとはディスカッションを行って気づきを共有する
- 他部署で気づいたことは各部署に伝える
このような取り組みになります。
目先の効率を考えると、そこまでするのはムダだという意見も上がるかも知れません。
ですが、5S活動を通して感性を磨いていくと、普段の業務でも色んな事に気づけるようになり、長期的に見て会社にとって大きなプラスになります。
ぜひ、5Sパトロールは全員で行うようにしてください。