5S活動を会社に定着させるには「全員で活動すること」が大前提となります。
5S推進委員会など一部の社員さんによる活動では、その人たちに負担がかかってしまいます。また、改善点を指摘される側の社員さんはいつまで経ってもやらされ感のまま、表面上取り繕うような活動に陥りがちです。
そのような進め方では会社の風土として定着しません。
5S活動で有名なトヨタ自動車では、新入社員のときにしっかり5Sを教育されるそうです。
5S活動の最終ステップ「躾」は、「整理・整頓・清掃の3S活動を全員が当たり前に行える状態」です。5Sを社内に定着させるためには、必ず全員参加で行うようにしましょう。
ただ全員参加と言っていても、一人ずつバラバラで行う活動だと、必ず「誰かやってくれるだろう」「とりあえず言われたことだけやればいいかな」という他人任せの意識が出てきて、やる人とやらない人の差がどんどん開いてきてしまいます。
そこで推奨しているのが少人数グループでの活動(小集団活動)です。
少人数グループでの5S活動
少人数グループの活動は、各グループごとに目標を掲げ、問題提起から改善のためのアイデア出し、計画・実行までを自分たち主導で行っていく活動方法です。
少人数グループでの5S活動のメリット
メリット①社員からの意見が出やすくなる
少人数グループで話し合いを行った場合、大勢で行う会議よりも発言するハードルが下がるため、意見が出やすくなります。
また、それぞれの意見が反映されやすくなり、5S活動にやり甲斐を感じやすくなります。
同時に当事者意識も芽生えてきます。
メリット②チームワークが向上する
グループでしっかり目標を設定して、その一つの目標に向かって話し合いを重ね協力していくことで、コミュニケーションの質が上がり、お互いの考えていることが分かるようになっていきます。
それによってだんだんとチームワークが良くなってきます。
メリット③チーム同士で切磋琢磨できる
グループごとで活動を行うとそれぞれの特色や進み具合に差が出てきます。
そのチーム同士の差が、お互いの刺激になって活動が活性化してきます。
また他のチームのアイデアを取り入れたりインスパイアされるなど、アイデアの展開も期待できます。
少人数グループでの5S活動の進め方
①グループを作る
まずは1グループ4名~6名程度のグループを作ってください。
これは意見が言いやすい・意見が反映されやすい人数です。
ちなみに弊社スマイルシステムサポートの5Sコンサルでは、部署をミックスでグループを作るようにしています。
これによって普段関わりの薄い他部署とのコミュニケーションが活発になって相互理解が深まり、会社全体でのチームワークが向上します。
この場合のグループは問題点の洗い出しや改善策・アイデア出しなどのディスカッションが中心で、実際の活動を行うのは部署ごとになります。
②リーダーを決める
次にグループの中からリーダーを決めてください。
リーダーの決め方は次の項目でお伝えします。
③グループの目標を決める
リーダーが決まったら、各グループごとに「目標」を設定ましょう。
自分のグループは「何を実現するために5S活動を行うのか」という目的を明確にした上で目標を決めてください。
この目標に向けて活動を進めていきます。
④PDCAを回す
自分たちで何が問題が、どこをどのように改善するかを考え、計画を立て実行する。
その結果を振り返って改善策を考え、計画を立てる。
このようにグループ単位でPDCAを回すように活動していきましょう。
少人数グループのリーダーの決め方
少人数グループの5Sリーダーを決めるときのポイントが2つあります。
- 役職者は避ける
- これから頑張ってもらいたい若い人材に任せる
以上の2点です。一つずつ解説します。
①役職者は避けること
役職者がリーダーになってしまうと、活動がトップダウンになったり、社員がリーダーに依存するようになってしまいます。
5S活動はトップダウンではなく、指示なしでも自分たち主導で自主的に活動できるボトムアップ型の活動が理想です。
役職者のリーダーに社員が依存し始めると「また会社が何やら始めたけど、そのうち指示がくるだろう、それまでは放っておこう」と指示待ちの受け身な心理状態に陥ってしまいます。
5S活動は一人ひとりが目的意識を持ち、意見を持って行動できる環境にしないと、言われたまま掃除やお片付けをする表面上の活動になって、本来の5Sの効果やメリットが得られなくなってしまいます。
②これから頑張ってもらいた若い人材に任せる
できれば5Sリーダーにはこれから頑張ってもらいたい若い人材に任せるようにしてください。
会社全体を統括する5Sリーダーとなると荷が重い感じがしますが、小グループ単位でのリーダーであれば、負荷がかかりすぎる事もなく、チームもまとめやすいです。
私が5S活動をお手伝いさせてもらっている会社様では、入社1年目の若手社員にリーダーを任せたことがありまし た。最初はおぼつかない感じで頼りないように見えましたが、活動を重ねるごとにだんだんと自覚が芽生えて、3年目には立派なリーダーに成長してくれました。
5S活動で失敗しても、会社にとって大きな痛手にはなりません。
反対に失敗から多くのことを学ぶことができます。
失敗、反省して、改善して、成功するというプロセスがリーダーを育ててくれます。
役職者の方は若い社員にどんどん任せて、それを後ろからサポートするようにしてください。
社員から出てきた意見を否定せず「やってみたらいいよ!」と背中を押すようにしましょう。
社員たちは徐々にイキイキと活動するようになってきます。
それは5S活動に留まらず、普段の仕事でも活かされます。若い人材を育てるためにも、この5S活動を活用してください。
まとめ
会社全体に5S活動を定着させるためには、
- 少人数グループ(4~6名)で活動を進める
- チームごとに目標を設定して、それに向けてPDCAを回していく
- リーダーは役職者ではなく、これから頑張ってもらいたい若い人材に任せる
- 役職者は社員の意見を否定せずに背中を押して、失敗も見守る
このように活動を進めていってください。