造業などでは「5S活動当たり前のこと」だと言われていますが、実際にちゃんとできている会社は、意外に少なかったりします。
当たり前だという認識はあっても、なぜそれをやるのかをちゃんと理解していなければ、ちゃんと取り組むことはできません。
5S活動は、会社を整理整頓清掃して綺麗にしていく活動だと認識されている方もいらっしゃいますが、これは本当の目的ではありません。
その先にあるものがとても重要です。
今回は5S活動に取り組む目的についてのお話です。
5S活動に取り組む目的とは?
業務の効率化
5Sの目的は、まず一つ目が生産性の向上のための業務効率化です。
業務の問題点を見つけ出し、それらを改善し、より効率的な環境に変えていく。
そのためにまず整理を行います。
要るモノと要らないモノを分けて、要らないモノを徹底的に処分する活動です。
モノが多いほどモノを探す時間や、管理コストなどのムダが生まれます。
職場は業務に必要なモノだけにしましょう。
業務効率化の為、整理の次に行うのが整頓です。
整頓とは、必要なモノをいつでも誰でもすぐに取り出せるようにすること。
適切な置き場所、適切な置き方で定位置を決め、一定の量が維持できるように定量化し、誰が見てもすぐわかるように標示を行います。
このようにして、職場の色んな場所を一つひとつ改善して、それを繰り返していくことで、どんどん業務が効率化していきます。
安全性の向上
5Sの目的二つ目は安全性の向上です。
5Sは事故や怪我の起こりやすい製造業から始まった活動。
健康で元気でなければ仕事はできないので、職場を安全にすることは最重要課題です。
この安全対策としても、整理整頓が大切です。
整理で要らないモノを処分し、整頓でモノの定位置を確定するのですが、このとき効率と一緒に考えるのが安全面です。
怪我をしないような置き方、事故の起こらない配置なども考慮しながら整頓は進めていきましょう。
作業現場でもっとも事故で起こりやすのが、「つまづき」です。
つまづきは、「想定していない場所にモノがあった」時に起こります。
しっかり定位置を決め、なるべく直置きは避けるようにしましょう。
それだけで大幅に事故率は下がります。
そして、モノの置き場所と、通路は区画線を引いてしっかり分けましょう。
その際、「線は踏まない」というのをルール化するのがポイントです。
事故の一番の大きな原因は「気の緩み」です。
この「線を踏まない」を徹底することで、働く人たちの中に「緊張感」が生まれ、事故防止に繋がります。
5Sの整理・整頓に続く清掃も重要です。
油汚れなどで床が滑るのも、清掃を徹底したり、清掃をやり方を工夫することで改善していけます。
そのとき、汚れる原因を分析して、そこから改善していくことも重要です。
また、事故防止のために危険な場所をしっかり見える化することも大切です。
このように、安全性を意識しながら5S活動を進めていくことで、職場はどんどん安全になっていきます。
快適性の向上
快適に仕事を行うためには、環境から快適にしていかなければなりません。
効率面もそうですが、無理な姿勢で作業をしていないか?部屋の温度は最適か?身体的ストレス、精神的ストレスはないか?
こういったこともすべて、よい職場環境を作っていくために、改善していくべきことです。
以上の三点、安全効率的、快適な職場を作ることが、主たる5S活動の目的になります。
しかし、それだけではなく、さらにその奥に大切な目的があります。
5S活動の本当の目的
上記に挙げた三つの目的の奥にある、本当の目的は「決めたルールを当たり前に守れる風土にすること」です。
5Sのステップの最終ゴールは「躾(しつけ)」になります。
3S活動(整理・整頓・清掃)を行い、それらが標準化(ルール化)され、みんなが自然にできる仕組みができると、それが「清潔」の状態です。
整理から始まり、整頓、清掃とステップを踏み、それらを維持継続できるように標準化する。
もし、その標準化したルールが守られなければ、守らなかった人のせいにするのではなく、守れる仕組みになっていないことに注目して、システムの方を改善していきます。
5Sで有名なトヨタには、「人を責めるな、しくみを責めろ」という言葉があります。
感情だけで犯人探しを行っても、根本的な問題解決にはなりません。
「エラーが起こるのは、システムに問題がある」と考え、みんなで「この問題が起こらないようにするにはどうすればよいか?」という方向で議論する。
こうして建設的に知恵を絞って改善を繰り返す中で、少しずつ社員は成長し、会社の風土に変化が起こります。
そして、それを継続していくことで、全員が3S活動を習慣化し、決めたルールを当たり前にできるようになります。
それが目指すべきゴール「躾」の状態であり、それが5Sの真の目的となります。
さらに、社内の問題点を一つひとつ探し出し、改善策を考え、話し合い、計画を立て、実行し、エラーが出たらまた原因を探り改善していく。
この一連のプロセスを繰り返していく中で、社員の中の「感性」が磨かれ、「気づく社員」に生まれ変わっていきます。
これは実際にあった例ですが、ある会社で、落ちてるゴミを見て見ぬふりをしていた社員が、3S活動に取り組んでいく中で徐々に変化が起こり、ゴミを拾ってゴミ箱に捨てるという当たり前のことができるようなったという話があります。
そうなったとき、社員たちは3S活動だけでなく、普段の仕事の取り組みにまで変化が起こってきます。
ホウレンソウができるようになったり、時間を守れるようになったり、ミスが減り不良品率が下がったり...
組織を風土から変えていくことで、会社にとってたくさんのメリットが表れてきます。
5Sが単なるお掃除・お片付けの活動ではないということがお分かりいただけたと思います。
整理・整頓・清掃はあくまで手段なのです。
あなたの職場に合った5Sの目的を明確にしよう
5Sの目的を挙げてきましたが、実際取り組むにあたっては、何を大事にするか?自分たちがどんな目的に向かって5S活動を行っていくか?を話し合う必要があります。
5Sを会社に浸透させるには、全員を巻き込んで、さらにそれを継続していかなければいけません。
そのためには、みんなを動かす、それなりの動機が必要になります。
そこで、「自分たちの会社にはこれが足りない!だから、これからはこんな会社にしていきたい!」という自社なりの5Sに取り組む目的を、まず明確にしましょう。
「5S活動が自分にとってメリットがある」と感じてもらえるほど、参加率が上がります。
その上で、具体的な目標を立てましょう。
「残業を〇時間に減らす」「不良品を〇%に減らす」「売り上げを〇%アップさせる」「コスト〇%カット」
など数値化するほど実現しやすくなるのでおすすめです。
そして目的・目標が決まったら、スローガンとして掲げましょう!
こうして、みんなが必要性を感じ、モチベーションの上がる目標を立てることで、5S活動は活性化しやすくなります。
もしあなたの会社で5S活動に取り組まれる際は、まずは皆さんで話し合って、「自分たちはこういう職場にするために5S活動をするんだ」という目的を明確にしてください。
それに向けて具体的な目標を立て、長期計画(一年間)と短期計画(1カ月)を立て、それに向けて活動を始めましょう。