日本で、特に製造業では「5S」は当たり前と言われ、5S活動にしっかりと取り組めているかは、会社の評価にも繋がってきます。
「5Sが出来ていない会社とは取引しない」というほど重要視する企業もあるほどです。
それほど5Sは重要で、多くのメリットをもたらすため、今では製造業以外でも取り入れ、挑戦する会社が増えています。
しかし、5Sについて表面的にしか知らず安易に取り組んでしまうと、メリットどころか、仕事の邪魔になり、組織の弱体化を招くなど、デメリットにもなりかねません。
これは会社にとっても、働く従業員にとってもマイナスです。
また、5Sって本当に良い活動なの?という疑問を抱かれている方も少なくないかと思います。
今回はそんな5Sのデメリットについて。
間違った5Sが引き起こすデメリット
5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の取り組みで、自動車のトヨタが取り入れて成功したことで有名になりました。
それぞれ、一つひとつしっかりと意味・目的があります。
この5Sの意味や目的を何かを知らずに取り組むとどのようなデメリットがあるのか。
1.非効率化
もっともよくあるパターンのデメリットは「非効率化」です。
トヨタでも重要視されているのが、業務を徹底して効率化すること。
その一環として5Sに取り組んでいます。
しかし、「職場をきれいにする」といった表面的な部分にだけ囚われて5Sに取り組むと、肝となる効率の部分が損なわれて、どんどん働きにくい職場になっていきます。
5Sの2番目の「整頓」とは、「誰でもすぐに取り出せるようにすること」です。
新入社員が入ったその日から、誰にも聞かなくても、辿り付ける、取り出せるようという状態を目指して改善していくのが5S。
綺麗にすることに囚われ、全部きっちりしまい込んだはいいが、すぐに取り出せない、探す、迷う、という現象を引き起こしてしまっていたら本末転倒です。
また、間違ったルールを決めてしまうことも弊害になります。
5Sでは、ルールを決めて徹底して守っていくことがとても重要なのですが、ルールを決める前に、何が問題か?何が原因か?を考えて話し合わず、一方的にルールを決めてしまうと、ある人にとっては効率的になったとしても、別の人にとって非効率化させてしまうこともあります。
例えば、清掃の時間が全社で昼の休憩の後に決まったが、部署や業務によっては、朝一や終業時の方が効率がいい場合もあります。
このように、表面に囚われて、見栄えだけで5Sを続けていくと、どんどん仕事がやりづらく、息苦しくなってきます。
2.やらされているだけの活動
もう一つ挙げられるデメリットのが、やらされているだけの活動になること。
5Sの5番目に「躾(しつけ)」という項目があります。
この「躾」は、単語の意味合いからよく誤解され、「部下や社員をしつける」というニュアンスに受け取られて、「しつけの一環として部下に5Sをやらせる」という風に、5Sをしつけのツールとして使われるということがよく起こっています。
これも本来の目的からは逸脱した、大きなデメリットをもたらす5Sの使い方です。
この5Sでいう「躾」とは、身分や立場関係なく、組織的に決めたこと、当たり前のことをみんなが守れる風土であることをいいます。
5Sを正しく理解し、正しいやり方で活動を継続していくと、社員全員がルールを守れる組織に変わってきます。
しかし、トップダウンで社員に強制的にやらせる活動になってしまうと、いつまで経っても「なんでこんなことをしなければいけないんだ」という疑問や不満は晴れず、嫌々やらされているだけ活動になってしまいます。
それでは社員の自主性を阻害されてしまい、継続することも困難になってきます。
5S活動は、社員が自分たちで問題点を洗い出し、アイデアを出し合って改善策を考え、職場を効率的で働きやすいものに変えていくことが醍醐味です。
やらされ感のまま続ける活動では、それがマイナスに働いてしまいます。
まとめ
企業や、そこで働く人達にとっては、安全や効率的であることがとても重要です。
5Sにはそれらを実現する力を持っています。
意味や目的を知らずに5Sをやると、会社や社員にとって邪魔や弊害になる活動になります。
そんな5Sなら最初からやらない方がよいかもしれません。
もしあなたの会社でこれから5Sに挑戦させようと思われているのでしたら、5S活動の意味や目的を明確にして、社員さんの疑問をクリアにした上で、正しい5Sのやり方で取り組みましょう。
そうすれば、必ず5Sを多くのメリットを享受できることとになります。