5S活動には、業務の効率化、品質管理、生産性向上、安全性向上、コスト削減など、様々なメリットがあります。
しかし、その推進方法には、多くの企業が頭を悩ませています。
そんな中、私たちスマイルシステムサポートは強く推奨しているのが、一般的なトップダウンでの進め方ではなく、組織全体に大きな風土改革を起こせる「ボトムアップでの5S活動推進」です。
今回は、そんな5Sをボトムアップ、つまり社員主導で推進するための具体的な「3つのポイント」を紹介します。
これらのポイントを抑えることで、持続可能な業務改善を行いながら、組織のチームワークを強化し、社員一人ひとりが主体的に考えて動く企業風土を築くことができます。
この記事はこんな方が対象です
- ボトムアップでの5S活動推進したい
- 5S活動のモチベーションが低い・自主的な活動にしたい
- トップダウンの企業風土を改革していきたい
- 社員が主体性を持って発信・提案する風土に変えたい
ボトムアップの5S活動とは
多くの組織では、5S活動をトップダウンで進めることが一般的です。
トップダウンの進め方というのは、上層部やリーダーが指示を出して、それに従って5Sが実行されるという形態です。
それに対して、ボトムアップは社員主導で行います。
社員が自分たちで職場の問題を探し、それに対する解決策を考え、自分たちで計画・実行しながら、活動を進めていく形態です。
ボトムアップによる5S活動の具体的なメリット
主体的な企業風土に変えられる
上記のように社員主導で5S活動を進めて行った場合、自分たちで考えて行動するということが、社員の中に根付いていきます。
目的や目標も、自分たちで設定して、自分たちで問題解決に取り組んでいくので、やり甲斐を持って活動ができるようになっていきます。
それは5S活動に留まらず、普段の仕事にも生かされ、問題解決や新しいアイデアを生み出すということを、主体的に行えるような企業風土に成長していきます。
それが新規事業やイノベーションを起こすための基盤になります。
コミュニケーションの活性化
さらに、問題点や改善策、計画など、定期的な話し合いが必要になるため、社内コミュニケーションが活性化していきます。
意見の言いやすい環境が整い、オープンな議論が習慣になると、社員同士の信頼関係が構築されます。
これにより、チームワークが強化され、異なる部署間でも連携が取りやすくなります。
情報の共有がスムーズになることで、組織全体の意思決定スピードが向上し、迅速な行動が可能になります。
社員の気づく力を育てる
また、5Sは会社をただ綺麗にしていく活動ではなく、「みんなでルールを決めて、それをみんなで守っていく」というのが本質です。
自分たちで整理・整頓・清掃のルールを決めていくので、ルールを守られていない状態や、普段と違う状態に敏感に「気づく」「気になる」ようになっていきます。
この気づく力は、仕事中にも発揮され、問題や異常にすぐ気づけるようになるため、品質管理や顧客満足度の向上にも繋がります。
社員が自ら「気づく」ことで、小さな問題を早期に解決し、大きな問題へと発展する前に防ぐことができるため、結果的にリスク管理にも役立ちます。
また経営面においても、市場や顧客のニーズの変化に敏感になり、それに適応する新たなビジネスチャンスを見つけるための土壌を育てます。結果として、5Sは従業員一人ひとりを、組織の成長を支える重要な資産に変えていく可能性を持っています。
トップダウンで5S活動を推進するデメリット
やらされ感のある活動になる
ボトムアップとは反対に、これまで一般的とされたトップダウン型の5S活動は、改善のスピードという点では勝っています。
ただ、上層部が決めたことに従うだけの活動は、いつまで経ってもやらされ感のある活動のまま、指示待ちの状態が続きます。
社員のモチベーションは低く、5Sの継続的な運用に必要な「やり甲斐」は感じられず、指示がなくなれば止まってしまう活動になります。
自主性・創造性を奪ってしまう
トップダウンでの進め方は、社員は自らの判断で問題を解決する機会がないのため、社員の自主性や創造性を奪ってしまう可能性があります。
指示に従うだけの活動は、個々の社員が持つ能力やアイデアを活かすことができず、社員が自身の仕事に対して主体的に関与することも阻害します。
結果として、組織全体のイノベーションが起こりにく風土を招きます。
本質的な改善にならない
トップダウンでの活動は、改善のプロセスにおいて現場の声が十分に反映されないことが多くあります。
現場の社員が日々直面している問題や改善提案が上層部に届かないため、改善活動が形式的なものになり、実際の作業改善につながりにくいのです。
一見綺麗で整った職場になったとしても、安全面が改善されていなかったり、業務が効率化されていなかったり、逆にそれらが悪化してしまうというケースもあります。
これが5S活動をトップダウンで進めた時に起きる問題点です。
5S活動をボトムアップで行うための3つのポイント
では、どうすれば上記のデメリットを回避して、社員の主体性を育て、組織風土を改革に至らしめる活動してしていけるのか?
3つの具体的なポイントをご紹介します。
ポイント①社員の意見を丁寧に聞き出す
5S活動を社員主導で進めるということは、社員たちがどこをどのように改善するか、自分たちで考えて進めていくということです。
そのためは、社員からの意見の発信がなければ前に進みません。
そこで行うのが、会議でリーダーがメンバー一人ひとりから丁寧に意見を聞き出すということです。
「意見のある人はいませんか?」と、メンバーに委ねた質問をするのではなく、「〇〇さんはどう思いますか?」と、全員から考えていることを引き出す形で質問していきます。
最初は意見が出ないかもしれませんが、毎回根気よく続けると、少しずつ意見が出るようになっていきます。
そしてそれが自ら発信する土壌を育てていきます。
ポイント②みんなで話し合って決める
会議をリーダーや上司の意見だけで進めてしまっていることがよくありますが、それでは「全て上司がやってくれる」という受動的な態度になり、社員の思考停止を招いてしまいます。
ボトムアップで進めていくためには、一人ひとりが問題解決に向き合っていくことが大切です。みんなで考え、みんなの意見を聞きながら計画を立てて進めていくようにしましょう。
解決策を考えるというのは頭を使う行為であり、苦手な人からは、すぐに答えが返ってこないこともあります。
そういった場面で、上司は待ちきれずついついアドバイスしてしまいがちですが、考える時間もしっかり取るようにしてください。
会議中に考える時間が足りなければ、その場で答えを求めるのではなく、「〇月〇日までに考えてきてください」と、宿題にすると良いかと思います。
ポイント③意見を否定しない
ここまでのポイントのように意見を吸い上げる形で進めていくと意見が出てきますが、時には実現が難しい提案も出てきます。
そんなときに注意して欲しいことが、どんな意見も否定しないということです。
せっかく出した意見を否定されると、次から意見が言いづらくなったり、意見することがバカらくなるなど、考えたり発言するモチベーションを下げる原因になってしまいます。
これは社員の主体性の成長を妨げる行為になります。
否定してしまいそうな意見が出てきた場合は、具体的な意見を聞くようにしてください。
「どうやったら実行できるのか」を深堀して質問します。
細かく質問していくことで、相手も頭の中を整理することができて1歩前進します。
ボトムアップでの会議の進め方・話し方について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
まとめ
ここまで5S活動をボトムアップで行うための3つのポイントを紹介してきました。
全体を通して大事なことは、社員が主体的に、前向きに考えて意見が出せる環境づくりをしていくということです。
そのためには、上司やリーダーの方が、時に自分の意見をぐっと我慢して、後輩の意見を待ったり、尊重したりすることも大切です。
それが後輩たちのモチベーションアップや、自主性を育てることに繋がります。
そして、必ず業務の方でも意見やアイデアが出るようになってきます。
業務の効率化や安全面の向上などの為だけでなく、社員一人ひとりの働きがいのある職場づくりのためにも是非、社員主導の5S活動に取り組んでください。