5S活動研修をさせていただいている会社様で、ある社員さんが次のような本音の悩みを打ち明けてくれました。
「5S活動が大切なのは理解できるし、できる限り活動を続けたい。上司も活動は応援してくれてる。でも活動をしていると生産が落ちてしまい、月次に上司から「なんで落ちてるんや!」と注意を受ける。みんな数字を落としたくないので5S活動に本気で取り組めない」
という悩みでした。
上司の5S活動に対する姿勢は、活動が上手くいくかどうかに大きく関わってきます。
5S活動は先行投資
今まで全く5S活動をしていなかった会社の場合、導入した最初の一年余りはやることがとてもたくさんあります。
まずは要らないモノを徹底的に捨てて、モノの置き場所や量を一つひとつ考えて決めて、業務の問題を洗い出して一つひとつ改善して、ルールを決めて...
こういった活動に時間や労力を割くことになれば、一時的に生産は落ちてしまいます。
しかし、これはあなたの会社の長い企業活動のほんの一瞬でしかありません。
最初の1年で徹底して活動をすれば、社内のムダは大きく減って、2年目以降は活動に割く時間が減ってきます。
上司の方としては生産や売り上げが落ちてしまうことがとても不安だと思いますが、中途半端に活動をしていては、何年経っても効率は良くならない上に、ダラダラとした無駄な時間になってしまいます。
5S活動で上司の方にやってもらいたい2つのこと
5S活動に取り組む上で、上司の方に実践していただきたいことが二つあります。
それが「聴く耳を持つ」ということと、「率先垂範して行動する」ということの二つです。
5S活動の進め方の理想はトップダウンではなく「ボトムアップ」です。
トップダウンでの5S活動では、社員がやらされ感をもったまま、受け身の状態で続けていく、後ろ向きな活動になってしまいます。
5Sの指導はトップダウン?ボトムアップ?最大限に効果を発揮する方法
逆にボトムアップ・社員主導で、社員からの意見をしっかり取り入れながら活動を進めていければ、徐々に社員さんが自分から動く前向きな活動になります。
さらに普段の業務でも自主的に動いたり、活発に意見やアイデアが出るようになって組織が活性化することにつながります。
そのためには5S活動では、上司の方は部下からの意見を否定せず、どんどん取り入れるようにしていってください。
また5Sで決まったルールは「しっかり守って実行」してください。
会社や職場のために社員が話し合って決めたルールを上司が守らなかったり、アイデアに対して聴く耳を持ってくれないと、部下は「どうせアイデアを出しても、ルールを決めても、上司が全然やってくれないから、結局何も変わらない」という風にモチベーションを下げることになります。
さらに会社の空気が「どうせルールを守ってくれない」という後ろ向きなものになり、会社に希望がもてなくなってしまいます。
逆に社員の決めたルールやアイデアを上司が一緒になって実践する姿勢を見せられれば、社員のモチベーションもどんどん上がります。
そして「任されている」という責任感が芽生え、上司と部下との信頼関係が生まれます。
今までトップダウンでやってきた組織では、これはとても大変なことかも知れませんが、まずは一度社員の力を信じて任せて、全員で活動できるようにサポートするように挑戦してみてください。
5S活動においては、社員の意見を実践して万が一失敗しても、会社として大きな痛手を追うことはありません。
逆に「失敗」から多くのことを学ぶことができ、それが社員の成長に繋がります。
まとめ
上司が社員の力を信じ、託す。決まったルールには、立場関係なく必ず従う。
それが社員のモチベーションになり、社員の自主性を伸ばします。
それは5S活動のみならず、後々通常業務でも力を発揮するようになります。
5S活動をきっかけに生まれるコミュニケーションや他部署との繋がりは、徐々に部署間の壁を壊し、風通しを良くしていきます。
しっかりとした連携ができてこれば、多くのムダやミスがなくなっていく。
そうやって組織として強くなっていくのです。
そうなるまでには時間が必要です。
活動を始めた当初というのは、上記のような強い組織を作るための地盤を形成していくプロセスになります。
そのために、社員を信じて任せられる上司の覚悟がとても重要です。