グローバル化が進み、KPIという言葉を耳にする機会が増えました。KPIは、企業の業績を客観的に評価し、業務改善や組織改革を推進するための重要な指標です。
今回は、KPIとは何か、その重要性や設定方法について詳しくご紹介します。
もくじ
KPIとは?
KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、組織や企業が目標達成のために使う評価基準のことです。業績や成果を数字で測定することで、現在の進捗を客観的に判断し、今後の計画を立てる際に重要な役割を果たします。
企業の欧米化が進み、成果主義の指標としてMBO(目標管理)などでKPIが広く使われていますが、日本特有のプロセス主義でも昔から企業の成長を支える手法として活用されています。
KPIの目的 〜業績向上に向けた効果的な指標とは〜
KPIの主な目的は、企業が目指す目標を明確にし、その達成に向けた進捗を数値等で可視化し、管理することです。これにより、現状のパフォーマンスを客観的に評価し、具体的なアクションを取ることが可能です。特に、BtoB企業では「新規顧客獲得数」や「月次売上成長率」などのKPIを設定することで、業務の進捗を明確に把握し、必要に応じて迅速な改善を行うことができます。
また、KPIは従業員全員が同じ目標に向かって行動するための「共通言語」として機能し、組織全体での連携や透明性の高い目標管理が可能になります。
KPIはただの指標ではなく、企業の成長を支える重要なツールです。定期的な見直しと調整により、目標達成に向けた進展が期待できます。
KPIの種類:ゴールKPI(KGI)とプロセスKPIの違い
KPIには大きく分けて「ゴールKPI(別名KGI)」と「プロセスKPI」の2種類があります。
- ゴールKPI(KGI):企業やプロジェクトが最終的に達成したい成果を示す指標。KGI(Key Goal Indicator)と呼ばれることもある。
- プロセスKPI:ゴールKPI(KGI)を達成するための進捗状況やプロセスを評価する指標です。
たとえば、健康診断では総合判定結果(A・B・C)がゴールKPIに該当し、血圧や体重といった検査項目がプロセスKPIとなります。ゴールKPIを達成するために、これらのプロセスKPIを維持コントロールしてゴールKPIを達成させます。
企業においても同様に、ゴールKPIに向かうためにプロセスKPIを適切に管理することが重要です。大きな組織では、上位のプロセスKPIが下位部門のゴールKPIになることもあり、全員で目標に向かって取り組む体制が整います。
さらに、KPIに関連する他の指標であるKGIやKAIとの違いについて詳しく知りたい方は、『KPIとKGI、KAIなどの違いを徹底解説』をご覧ください。これらの指標の役割や使い方を理解することで、企業目標の達成に向けた適切な評価・管理がしやすくなります。
KPIとKGI、KAIなどの違いを徹底解説|KPIツリーで目標を効果的に管理する方法
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KPIツリーとは?
KPIを体系的に整理し、目標達成に向けた流れを視覚的に示す手法として「KPIツリー」という手法があります。KPIツリーを使うことで、企業の最終目標(KGI)に向けて、各部門やチームが設定するKPIが、どのように関連しているか一目で把握できます。
たとえば、企業のKGIとして「生産コスト削減目標〇〇円」を設定した場合、製品リードタイムに関するKPIとして「ライン稼働率」や「工程間待ち時間」、製品不良率に関するKPIとして「製品検査通過率」や「再加工率」などが、それぞれの役割を果たし、最終目標に向かって連携します。
KPIツリーを活用することで、各部門がどのように目標に貢献しているかを可視化でき、全体の進捗をより効果的に管理できるのです。
KPI設定で陥りがちな落とし穴
多くの企業がゴールKPIのみを設定し、プロセスKPIを明確にしないまま進めることがあります。これでは、目標未達時に原因が特定できず、次の改善策が立てられません。また、ゴールKPIを達成するために数字を操作するリスクも高まります。
例えば、あるアジアの工場で稼働率をKPIとして設定した事例があります。稼働率の測定や管理が行われていない中、マネージャーが「稼働率が120%を超えた」と報告。しかし、実際には不良品の手直しが含まれていたため、データは不正確でした。
このような場合、KPI達成が目的化してしまい、本来の企業成長という目的から逸脱してしまうことがあります。KPIは適切なプロセス管理と組み合わせてこそ、健全な成長を促進します。
KPI設定のポイント:SMART原則で目標を明確に
KPIを効果的に設定するには、SMARTという基準に従うことが推奨されています。
- S: Specific(具体的であること)
「売上を増加させる」というあいまいな目標ではなく「2024年度に年間売上を10%増加させる」という具体的な目標にする。 - M: Measurable(測定可能であること)
売上額、顧客数、従業員満足度など、数値化可能な項目を設定する。 - A: Achievable(達成可能であること)
現実的な範囲で、段階的に達成可能な目標を設定する。 - R: Related(経営目標に関連していること)
企業の全体目標と関連しているようにする。部門ごとのKPIも、全社的な戦略やビジョンと一致させる。 - T: Time-bound(期限が設定されていること)
期限を明確にすることで、具体的な行動計画が立てられる。
業務の種類から考える効果的なKPI設定
KPIを効果的に設定するために、業務の種類を理解しておくことが重要です。業務は以下の3種類に分類できます。
- 業務:日常的に行う通常業務。
- 問題解決:設備が止まったり、予定した部材が入ってこないなど普段とは違ったことが発生し、それを解決する緊急性の高い仕事。
- 課題達成:現状をさらに改善するための活動。
これら3つすべてに対してKPIを設定可能ですが、特に「課題」はプロセスKPIとして設定することで、継続的な成長を促進します。緊急性が低く、重要性の高い課題であっても、KPIのレビューを通じて確実に取り組む仕組みが必要です。
KPIの視える化
KPIマネジメントを行う際には、KPIの視える化がとても重要です。
KPIを視える化することで、組織全体で目標に向けた行動が強化されます。たとえば、製造ラインでは電光掲示板を使って生産数や歩留まりをリアルタイムで表示し、全員がKPIを意識できる環境を作ります。
視える化にはリアルタイム表示や、日報・週報での共有が有効です。KPIを全員で共有することにより、目標に向かって一丸となって行動する環境が整います。
KPIのレビューの重要性
KPIは定期的なレビューが欠かせません。ゴールKPIだけでなく、プロセスKPIも含めて進捗を確認し、適時調整することで最終目標達成への道筋がより明確になります。
もしゴールKPIが未達だった場合でも、プロセスKPIに基づく改善アクションが組織の財産となり、成長に貢献します。
KPIの成功事例
KPI設定の事例「営業本部」
- ゴールKPI:受注金額3,000万円
- プロセスKPI:
- 電話件数:500件
- 訪問件数:100件
- 見積件数:50件
KPI設定の事例「品質管理部」
- ゴールKPI:不良率1,000ppm以下
- プロセスKPI:
- アセンブリ工程の不良率:800ppm以下
- QC工程図によるインプット管理の開始
- インプット管理による工程異常ゼロ
KPI設定の事例「生産本部」
- ゴールKPI:A商品の製造リードタイム10分以内
- プロセスKPI:
- リワーク率:0.5%以下
- アセンブリ工程の生産性20uph達成
まとめ 〜KPIで業務改善と組織改革を実現する〜
KPIは企業の成長を支える重要な指標です。ゴールKPIとプロセスKPIを適切に設定し、定期的にレビューすることで、組織全体の目標達成が可能になります。
また、大規模な組織では、KPIは方針管理(中期経営計画)とリンクして管理されることが一般的です。方針管理は改善や5S活動と同様に日本独自の手法で、海外のグローバル企業でも「Hoshin-Kanri」として呼ばれ、重要な経営手法として企業に取り込もうとしています。
KPIを正しく設定し、全員で共有しながら、組織の成長を確実に推進していきましょう。