業務改善と品質管理

動作経済とは?製造業で作業効率と生産性を上げる4原則×3視点の改善手法

動作経済とは?

毎日の作業で「無駄が多い」「疲れる」「非効率だ」と感じていませんか?そんな悩みを解決するのが、IE(Industrial Engineering)の基本手法である「動作経済」です。

これは作業を楽にしながら、ムダを排除し、作業効率・生産性・品質・安全性を同時に高めるための考え方です。製造業をはじめ、物流や介護、建設現場、オフィス業務にも応用されており、5S活動やマトリクス分析とも相性抜群。

本記事では、動作経済の4原則と3つの視点、改善事例や実践方法を初心者にもわかりやすく解説します。

動作経済の概要

動作経済とは?

製造業で効率化を進める際に、IE(Industrial Engineering)の手法として「動作経済」という言葉を耳にすることがあります。しかし、「動作」と「経済」が結びつくイメージが湧かず、初めて聞く人には少し難しく感じられるかもしれません。

動作経済とは、「作業を楽にすることが、結果として利益につながる」という考え方です。
簡単に言えば、「楽になる=ムダをなくす」という視点で、人の動きや作業方法、作業環境を見直し、効率化を進める手法のことを指します。

動作経済の目的

動作経済の目的は、作業者の負担を軽減しつつ、生産性を最大化すること です。これを実現するためには、以下のような要素を考慮する必要があります。

  • 無駄な動作を減らす(効率化による時間短縮)
  • 作業の標準化を進める(誰でも同じ作業効率を維持できる)
  • 作業者の疲労を軽減する(無理のない動きでミスを防ぐ)

このように、動作経済は「作業者が楽になることで、業務全体の効率が向上する」というシンプルな考え方に基づいています。

 

動作経済のメリット

動作経済を実践することで、作業効率が向上するだけでなく、作業者の負担軽減や職場全体の生産性向上につながります。ここでは、動作経済を導入することで得られる主なメリットを紹介します。

1. 生産性の向上

無駄な動作を減らすことで、作業時間の短縮 が可能になります。たとえば、必要な工具が遠くにあると、その都度取りに行く時間が発生します。しかし、工具を作業エリアの近くに配置すれば、移動のムダがなくなり、より短時間で作業を完了できます。

具体例としては、工場の生産ラインで、部品を手元に配置することで、取りに行く時間を削減するなど。

2. 作業者の疲労軽減

長時間の作業では、無駄な動作が積み重なることで、作業者の体力を消耗 してしまいます。動作経済を活用して、楽な姿勢で作業できるようにすれば、体への負担を軽減できます。

例えば、立ち仕事での作業台の高さを適切に調整し、前かがみの姿勢を減らすなど。

3. ヒューマンエラーの削減

無駄な動作が多いと、作業の流れが複雑になり、ミスが発生しやすくなります。動作経済を取り入れることで、シンプルで分かりやすい作業手順を確立でき、ヒューマンエラーのリスクを低減 できます。

例えば、部品の取り付け順を視覚的に分かりやすくし、誤組立を防止するなど。

4. 作業の標準化が進む

動作経済の手法を取り入れると、作業がよりシンプルになり、誰がやっても同じ品質の作業を行えるようになります。これにより、新人の教育もスムーズに進み、熟練者のスキルに依存しない安定した業務が可能になります。

例えば、工場の組立工程で、作業手順を統一し、誰でも一定のスピードで作業できるようにするなど。

5. 職場環境の改善

動作経済は、個人の動作だけでなく、作業場全体の環境改善にも役立ちます。作業スペースの整理整頓を進めることで、より効率的な職場環境を実現できます。

例えば、通路の障害物を取り除き、移動しやすい動線を確保するなど。

 

動作経済の基本原則

動作経済には、作業のムダをなくし、効率的な動作を実現するための「4つの基本原則」があります。これらの原則を活用することで、無駄な動きを減らし、作業の効率化を図ることができます。

動作経済4原則のポイントと事例一覧

1. 動作の数を減らす

不要な作業をできるだけ省き、シンプルな動作にすることが重要です。

ムダな動作の例:

  • 必要な工具を探す時間が長い
  • 何度も同じ物を持ち替える
  • 作業前の準備に手間がかかる

改善策:

  • 工具や材料の配置を最適化し、探す時間を短縮
  • 作業手順を整理し、動作の重複を排除
  • 事前に必要な物を準備し、作業をスムーズに開始できるようにする

📌 事例:
製造現場で、部品や工具の収納場所を決めてラベルを貼ることで、「探す」というムダな動作を削減。結果として、作業時間を10%短縮。

2. 動作を同時にする

一方の手が遊んでいると、それだけで作業時間が長くなります。両手を効果的に使い、同時に動作を行うことがポイントです。

ムダな動作の例:

  • 一方の手で部品を持ち、もう一方の手で別の作業をしていない
  • 片手で工具を使いながら、もう片方の手が何もしていない

改善策:

  • 両手をバランスよく使い、並行して作業を進める
  • 片手で部品を持ちながら、もう一方の手で組み立てを行う
  • 治具(作業補助具)を活用し、片手で済む作業を増やす

📌 事例:
組立作業で、両手を使って同時にネジを締めることで、作業スピードが20%向上。

3. 動作の距離を短くする

作業エリア内の移動距離が長いと、それだけで時間と労力が増えます。できるだけ短い距離で作業が完結するように配置を工夫することが重要です。

ムダな動作の例:

  • 必要な物が遠くにあり、毎回歩いて取りに行く
  • 作業台の上に物が散乱していて、必要な物に手が届かない
  • 物を持ち運ぶために、何度も往復する

改善策:

  • よく使う道具や材料を手元に配置する
  • 作業台のレイアウトを見直し、移動距離を最小限にする
  • スパゲッティチャートを活用し、移動のムダを「見える化」して改善する

📌 事例:
作業者が1日に50回歩いていた部品の取り出し作業を、部品を手元に配置することで0回に削減。1日あたりの歩行距離が3km減少し、作業者の負担が軽減。

4. 動作を楽にする

無理な姿勢や不要な力を使う作業は、作業者にとって負担が大きくなります。より楽に作業できるように、動線や道具を工夫することが重要です。

ムダな動作の例:

  • 前かがみや中腰の姿勢で作業をしている
  • 重い物を持ち上げる回数が多い
  • 進行方向と逆向きに物を運ぶ

改善策:

  • 作業台の高さを適切に調整し、前かがみの動作を減らす
  • ローラーやコンベアを使い、重い物の持ち運びを楽にする
  • 重力を活用し、流れるような動線で作業できるようにする

📌 事例:
作業台の高さを5cm上げることで、腰を曲げる回数が1時間あたり30回減少し、作業者の疲労が軽減。

 

動作経済の3つの視点

動作経済の改善を進める際には、単に作業者の動作だけを見るのではなく、「人・環境・道具」 という3つの視点から観察することが重要です。これにより、より総合的なムダの発見と改善が可能になります。

動作経済の基本原則(4つの原則)と組み合わせることで、「4つの基本原則 × 3つの視点 = 12の視点」 からムダを見つけ出し、改善を進めることができます。

1. 動作方法(人の動きに着目)

作業者の体の動かし方や手順に着目し、無駄な動作を減らす工夫をする。

ムダな動作の例:

  • 片手しか使っていない(動作を同時にできるのに活用できていない)
  • 何度も同じ動作を繰り返している(不要な動作の削減が必要)
  • 無理な姿勢で作業をしている(前かがみ、中腰、腕を高く上げるなど)

改善策:

  • 両手を使って同時に作業を進める
  • 体の負担が少ない姿勢で作業できるように高さや角度を調整する
  • 連続した作業を1回の動作で完結できるようにする

📌 事例:
工場での組立作業において、「両手作業を導入」 することで作業時間が20%短縮し、効率が向上。

2. 作業場所(環境に着目)

作業エリアの配置や作業スペースの状態に着目し、効率的な環境を整える。

ムダな動作の例:

  • 必要な道具や部品が遠くにある(移動距離が長くなる)
  • 作業スペースが狭すぎて体を動かしにくい(ストレスが増える)
  • 照明が暗くて手元が見えにくい(ミスの原因になる)

改善策:

  • よく使う道具や部品を作業者の手元に配置する
  • 作業台の広さを適切に確保し、動きやすいスペースを確保する
  • 照明の明るさを調整し、作業の視認性を向上させる

📌 事例:
製造ラインのレイアウトを見直し、「作業エリアを最適化」 することで、1日あたりの歩行距離を30%削減。

3. 治具・工具・機械(道具や設備に着目)

使用する道具や機械の設計を工夫し、作業のしやすさを向上させる。

ムダな動作の例:

  • 重い工具を持ち上げる回数が多い(体への負担が大きい)
  • 使いにくい工具や機械を使用している(余計な力や時間がかかる)
  • 道具の配置が悪く、取り出しにくい(取り出しやすさが重要)

改善策:

  • 軽量で扱いやすい工具を導入する
  • 置くだけで簡単に取り出せるホルダーやラックを活用する
  • 作業に合った治具や補助機器を導入し、手作業の負担を軽減する

📌 事例:
重い工具を使う作業において、「工具を軽量化し、吊り下げ式にする」 ことで作業者の負担を50%削減。

 

要素ヒント動作方法作業場所治具・ 工具・ 機械
数を
減らす
探す、選ぶ、用意する等必要以上に行っていないか?・ 不必要な動作をなくす
・ 目の動きを少なくする
・ 2つ以上の動作を組み合わせる
・ 材料や工具は人の前方 一定の場所に置く
・ 材料や工具は作業順序に合わせて置く
・ 材料や工具は作業し易い状態に置く
・ 材料や部品の取り易い容器・器具を利用
・ 2つ以上の工具は1つ に組み合わせる
・ 治具への締め付けには動作数の少ない機構を利用
・ 機械の操作は1動作で行える機構にする
同時に
行う
一方の手の手待ち、保持が発生していないか?・ 両手を同時に動かし始め同時に終る
・ 両手を同時に反対、対象方向に動かす
・ 両手同時動作ができるように配置する・ 対象物の長時間の保持には保持具を利用
・ 簡単な作業または力を要する作業には足(脚)を使う器具を利用
・ 両手の同時動作ができる治具を考える
距離を
短くする
不必要な大きい動きで行っていないか?・ 動作は最適身体部位で行う
・ 動作は短距離で行う
・ 作業域は支障のない限り狭くする・ 材料の取り出し・送り出しには重力や機械力を利用
・ 機械の操作位置は動作の最適身体部位で行えるようにする
楽にする動作を楽にできないか、数を減らせないか?・ 動作は制限のない動作に近づける
・ 動作は重力や他の力を利用
・ 動作の方向やその変換は円滑にする
・ 作業位置の高さは最適にする・ 一定の運動経路を規制するために治具やガイドを利用
・ にぎり部は掴みやすい形にする
・ 見える位置で楽に位置合わせできる治具にする
・ 機械の移動方向と操作方法を同じにする
・ 工具は軽く扱えるようにする

 

5. 動作経済の活用方法

動作経済を実践するためには、「ムダを見つける手法」「改善策を立てるツール」 を活用することが重要です。
ここでは、代表的な「スパゲッティチャート」と「マトリクス図」を紹介し、どのように活用すればよいか解説します。

1. スパゲッティチャート(移動のムダを見える化)

スパゲッティチャートとは、作業者の動線(移動経路)を図面上に線で描き、ムダな動きを見える化 する手法です。
作業者がどのように動いているのかを視覚化することで、不要な移動や遠回りをしているポイントを特定 し、作業エリアのレイアウトを改善できます。

スパゲッティチャートによるレイアウト改善

スパゲッティチャートの作成手順:

  1. 作業エリアのレイアウト図を準備(工場・オフィス・作業場の見取り図)
  2. 作業者の移動経路を記録し、図に線を描く
  3. 線が交差している・長く伸びている部分を特定(ムダな移動の発見)
  4. 作業エリアの配置を見直し、移動距離を最小限にする

📌 事例:
ある製造ラインでスパゲッティチャートを作成した結果、作業者の1日あたりの移動距離が5km以上あった。
そこで、部品棚の配置を見直し、移動距離を50%削減。作業効率が向上し、作業時間も15%短縮できた。

2. マトリクス図(12の視点で作業を評価)

動作経済には、「4つの基本原則」×「3つの視点」=合計12の視点 があります。
この12の視点をチェックリストとして活用し、ムダを発見しやすくするのがマトリクス図 です。

マトリクス図の作成手順:

  1. 横軸に「4つの基本原則」(動作の数を減らす、同時にする、距離を短くする、楽にする)
  2. 縦軸に「3つの視点」(動作方法、作業場所、治具・工具・機械)
  3. 各交差点のセルに、改善すべきポイントを記入
  4. 改善点をもとに、作業手順や作業環境を最適化
視点\基本原則動作の数を減らす動作を同時にする動作の距離を短くする動作を楽にする
動作方法探す動作を減らす両手作業を増やす移動距離を短縮楽な姿勢で作業
作業場所使わない物を減らす作業エリアを整理レイアウトを最適化照明を改善
治具・工具・機械必要な道具だけ使用両手で使える治具取り出しやすい収納軽量な工具を導入

📌 事例:
工場の組立作業において、マトリクス図を活用し「動作を楽にする × 治具・工具」の視点で分析した結果、
「作業台の高さが低く、前かがみの姿勢が多い」 という問題を発見。高さを調整したところ、作業者の疲労が大幅に軽減された。

動作経済を定着させるための5S活動

動作経済の改善を意識的に行う前に、まず「5S活動」が基礎として整っていることが重要です。

5S活動とは、「整理・整頓・清掃・清潔・躾」の5つの要素からなる、職場環境を改善するための基本的な取り組みです。働きやすく、安全で効率的な職場をつくる“仕事の土台”とも言える活動です。

 

この中でも、2番目の「整頓」は動作経済と非常に深く関係しています。

整頓とは、単に物を並べることではなく、業務を効率化するための配置・設計を行うプロセスです。たとえば、「よく使う道具はすぐ手が届く場所に置く」「ムダな動線をなくす」「自然な動きで取れる位置にする」といった工夫が求められます。こうした整頓の実践自体が、動作経済の考え方に直結しています。

そのため、動作経済を現場に定着させるには、まず5S、特に「整理」と「整頓」の2Sを徹底することが効果的です。5Sを基盤とすることで、無駄な動作が自然と削減され、効率的な作業環境が整っていきます。5Sと動作経済は組み合わせることで、より大きな改善効果を発揮します。

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まとめ

動作経済は、「作業を楽にすることで、業務全体の効率を向上させる」 というシンプルな考え方に基づいています。

作業者の負担を軽減しながら、生産性を高めるために、以下のポイントを押さえて実践していきましょう。

 動作経済の重要ポイント

「4つの基本原則」 でムダを削減

  • 動作の数を減らす(不要な動作を省く)
  • 動作を同時にする(両手を活用して並行作業を増やす)
  • 動作の距離を短くする(移動距離を最小化)
  • 動作を楽にする(作業者の負担を軽減)

「3つの視点」 で作業を最適化

  • 動作方法(作業者の動きを効率化)
  • 作業場所(レイアウトを改善し、動線を短縮)
  • 治具・工具・機械(道具や設備を工夫し、作業を楽にする)

スパゲッティチャートとマトリクス図を活用する

  • スパゲッティチャート で作業者の動線を可視化し、ムダな移動を削減
  • マトリクス図 で12の視点から作業を分析し、改善策を具体化

5Sと組み合わせて職場環境を整える

  • 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾) で職場のムダを排除し、動作経済の効果を最大化

 動作経済を実践するためのステップ

1️⃣ 職場や作業のムダを観察する(スパゲッティチャートを活用)
2️⃣ 4つの基本原則 × 3つの視点で分析する(マトリクス図を活用)
3️⃣ 5Sを実施し、環境を整える(整理・整頓を徹底)
4️⃣ 改善策を実施し、継続的に見直す(チームで改善を進める)

小さな改善の積み重ねが、大きな成果につながります。ぜひ明日から、できるところから動作経済を実践してみてください。

  • この記事を書いた人

Smile System Support

㈱Smile System Support 代表。保険会社の営業、ウェディングプランナーを経て、5S活動講師・コンサルタントとして起業。5S活動を手段とした社員育成と企業風土改革を支援している。

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