要点まとめ
- マトリクス図法は、数値評価を用いて選択肢を客観的に比較し、公平な意思決定を支援する手法です。
- 主な評価指標は「実現性」「効果」「即効性」で、これによりチーム内の意見対立を解消し、全員納得の決定を促します。
- 製造業の品質管理、プロジェクト選定、人材評価など、さまざまな分野で活用可能な柔軟なツールです。
- 指標のカスタマイズも可能で、組織の目的に合わせた評価が行えます。
「チームの意思決定で『声が大きい人の意見が優先される』『意見が割れて決まらない』という問題を解決するには、客観的に評価できる方法が必要です。
本記事では、数値評価で公平な判断を可能にする『マトリクス図法』について、活用方法と実践例をわかりやすく解説します。」
マトリクス図法の基本
マトリクス図法とは、複数の選択肢の中から最適なものを選ぶための意思決定ツールです。「新QC7つ道具」の一つに数えられ、特にQCサークルなどの改善活動で活用されています。
この手法の大きな特徴は、選択肢を数値化して評価し、公平かつ客観的に意思決定を行える点です。
例えば、意見の対立がある場合でも、感情や立場に左右されることなく、定量的な判断が可能になります。
また、マトリクス図法では、各選択肢を「実現性・効果・即効性」などの判定指標で評価します。この評価基準を明確にすることで、なぜその選択肢を採用したのかを論理的に説明でき、チームメンバーや上司の納得を得やすくなります。
マトリクス図法の構成要素
マトリクス図法では、意思決定をサポートするために 「マトリクス表」 を使用します。この表には、選択肢(候補)と、それを評価する 「判定指標」 が含まれます。
マトリクス表の構造
- 候補欄:検討対象となる選択肢をリストアップ
- 判定指標:各選択肢を評価する基準
- スコア:各指標に基づいて数値評価を行い、合計点で比較
判定指標の種類
マトリクス図法では、一般的に 以下の3つの指標 を使用します。
- 実現性(実行のしやすさ)
- 高:7点 / 中:5点 / 低:3点
- 効果(期待できる成果の大きさ)
- 高:7点 / 中:5点 / 低:3点
- 即効性(実施後に結果が出るまでのスピード)
- 早:7点 / 中:5点 / 遅:3点
数値化することで、選択肢を客観的に比較でき、直感や意見の偏りを防ぐことができます。
マトリクス図法の具体的な活用例
実際にマトリクス図法を使用した 不具合対策の選定プロセス を紹介します。
ケーススタディ:不具合対策の選定
ある製造現場で、不具合が頻発する問題が発生しました。チームが対策案を3つ考えましたが、どれを採用すべきか迷っています。そこで、マトリクス図法を活用し、各案を評価することにしました。
対策案
- 設備の改修
- 作業マニュアルの改善
- トレーニングの実施
評価基準とスコアリング
この結果、「トレーニングの実施(19点)」が最適な対策として選ばれました。数値で評価することで、全員が納得しやすい意思決定が可能になります。
QCサークルでの活用
QCサークル(小集団活動)では、改善テーマの選定や不具合対応の意思決定によく活用されます。マトリクス図法を使えば、上司やベテランの意見に偏らず、全員が納得できる決定ができるため、チームワークの向上にもつながります。
マトリクス図法を使うメリット
マトリクス図法を活用することで、合理的かつ公平な意思決定が可能になります。ここでは、その具体的なメリットを紹介します。
① 客観的な意思決定ができる
マトリクス図法は、感情や主観に左右されない 「数値による評価」 を採用しています。そのため、選択肢ごとの優劣を明確な基準で判断でき、個々の意見の対立を避けることができます。
② チーム全体の合意形成を促進
意見が割れやすい場面でも、評価基準を明確にした上でスコアを集計することで、全員が納得しやすい決定が可能です。特に、QCサークルなどのチーム活動では意思決定をスムーズにする効果があります。
③ 上司や関係者への説明が容易
なぜその選択肢を採用したのかを数値データで示せるため、上司や関係者へ説得力のある説明ができます。特に、改善活動や不具合対策の場面では、合理的な報告資料としても活用可能です。
結果として、マトリクス図法は「納得感の高い意思決定」を実現できるツールと言えます。
マトリクス図法の応用とカスタマイズ
マトリクス図法は、意思決定を要するさまざまな分野で応用可能です。また、判定指標をカスタマイズすることで、より柔軟に活用できます。
① 応用可能な分野
マトリクス図法は、以下のような場面で活用されています。
- 製造業の品質管理:不具合対策や改善策の選定
- プロジェクトの意思決定:最適な戦略や優先順位の決定
- 人材採用・評価:応募者の選定や社員のスキル評価
数値化による公平な評価が求められる場面で特に有効です。
② 指標のカスタマイズ
一般的な「実現性・効果・即効性」に加えて、状況に応じてカスタム指標を追加できます。
- 安全性(リスクの少なさを評価)
- 親和性(チームや組織に適合するか)
- コスト(実施にかかる費用)
企業の文化や目的に合わせて、最適な指標を設定すると、より実践的な判断が可能になります。
まとめ
マトリクス図法は、実現性・効果・即効性といった指標で選択肢を比較し、納得度の高い意思決定を支援する手法です。
製造業の現場やQC活動にも活用できるこの図法を、業務改善やチーム運営にぜひ取り入れてみてください。