5S活動の中でも一番あいまいでやり方のよく分からないのが「躾」。
今回は、5S活動を習慣化して社員の「躾」を育てる方法について。
その前にまず5S活動とは、製造業や病院などで取り組まれている職場環境を整える活動のことで、「整理、整頓、清掃、清潔、躾」の5つの活動です。
詳しくはこちらをご覧ください。
5Sとは?最初に知るべき5S活動の意味・目的と効果・メリット
5Sというと5つの活動のように思われるかもしれませんが、実際に具体的に行動するのは、最初の3つ「整理・整頓・清掃」の3S活動です。
この3S活動を標準化して、維持継続できるようになった状態が5S活動の「清潔」の状態です。
そして、3S活動が習慣化し、決められたことを当たり前に守れている状態が「躾」の状態です。
(5Sの「躾」に違和感?誤解されがちな「躾」の本当の意味とは)
この5Sの躾は、言葉からイメージするような「社員をしつける」というようなものではなく、活動を継続していく過程で少しずつ自然に変化が起こり、「気づけば会社全体の風土から変わっていた」というようなイメージです。
躾はトップダウンではなくボトムアップで
5S活動には、2つの道があります。
一つは、上司の命令・指示でルールを決めて、部下の社員に活動をやらせるトップダウン式。
もう一つは、社員にある程度の権限を渡し、自分たちで考えて、計画、行動するように促すボトムアップ式。
どちらのやり方も間違いではなく、求める結果によっては成功させられます。
しかし、会社の未来にとって大きなプラス面を持っているのは、後者のボトムアップ式の5S活動です。
ボトムアップ式の5S活動は、社員が自分たちで考えて活動を行います。
すると、継続するうちに社員に「気づく力」「考える力」がついてきます。
そして、定期的に活動の報告会を開催し、話し合いの時間を設けることで、「計画・実行・反省・改善」のPDCAサイクルが自然に身に付いてきます。
また、自分で考えて解決することの楽しさを感じ、自然とモチベーションが高まります。
これを継続していくと、その効果は5S活動から飛び出し、普段の業務でも発揮するようになります。
「どうすればもっと効率的にできるか?」「どうすればもっとムダを減らすことができるようになるか?」と自然に考えられるようになってきます。
これがボトムアップ式5S活動の躾における最大の効果であり、会社にとって大きな利益となります。
しかしトップダウン式での5S活動の場合、社員は言われたことに従うだけなので、自分で考えるということをしなくなります。
いつまでたってもやらされ感のまま活動が続きます。
5S活動が定着するという点ではどちらも成功と言えます。
しかしやり方は北風と太陽です。
あなたの会社はどちらを選びますか?
5S活動を習慣化するコツ
5S活動を維持継続させ、躾(風土を改善する)を成功するためのポイントは「習慣化」です。
とは言え、日々業務が忙しい中、本来の業務とは関係のない5Sに、なかなか時間を割くことができない会社様も多いかと思います。
そんな中で5S活動をいかにして習慣づけするかがポイントです。
①活動報告会を定期開催する
自分たちの5S活動を定期的に発表する場所を作りましょう。
各部署での5S活動がどのように進んだか、どんな成果が出たかなど、ビフォオーアフターの社員が入った活動報告資料を作成し、月に1回程度の頻度でお互いにプレゼンし合う機会を作ってください。
他部署の活動を見ることはとても刺激になります。
良いアイデアは盗み合うことができるし、対抗心によって活気も出てきます。
また、報告資料を作成することで、改めて自分たちの振り返ることができますし、過去の資料を見返すことで、活動の進展ぶりや自分たちの成長度合いを確認できます。
この集まった機会で、意見交換や、反省会、次の目標や計画を立てるとより効果的です。
これを繰り返すことでPDCAを自然に学ぶことができます。
これは弊社がコンサルで行っている手法そのものです。
とても有効な手法ですので、ぜひ挑戦してみて下さい。
②行動する仕組みを作る
5S活動が習慣化された状態とはどんな状態か。
分かりやすい目安は「やらないとなんか気持ち悪い!」という感覚がある状態です。
「元に戻さないと気持ちが悪い」「作業台が片付いていないと気持ちが悪い」「一度拭かないと気持ちが悪い」などです。
このような状態を作る為に一番良い方法は、自然にそうなる仕組みを作ってしまうことです。
例えば、工具の置き場。
工具の定位置を決めたら、形跡管理(姿絵)をします。
このように工具の置き場所をそれぞれの工具の形にかたどって、「それしか入らない状態」にしてしまうのです。
こうすることで、自然に元の場所に戻すようになります。
また、何がなくなったかすぐにわかり、「この工具はどこいった?」ということになり、気になります。
バラバラに置かれた状態ではそうはいきません。
こちらは、スリッパ置き場の例。
スリッパが置かれている下には、スリッパの足型が描かれています。
こうすれば、先ほど同様、無意識に元の場所に戻るようになります。
このように「自然に行動してしまう」という状態を作ることが習慣づけの大きな手助けとなります。
③行動を見える化する
日々の行動の視点で見ると、やったかやっていないかが曖昧だと行動を習慣づけすることが難しくなります。
その為に、行動を見える化して、仕組み化しましょう。
まずは、各人「毎日行う」行動を決めます。
- 毎朝終業前に清掃をする
- 終業後必ず作業台をもとの状態に戻す
- 帰る時必ずデスクはパソコンと電話のみの状態にする
- 休憩終わりで必ず一度床のゴミを片づける
など、なるべく毎日できそうな簡単な行動にしましょう。
簡単な行動であるほど習慣化はしやすくなります。
行動を決めたらチェックシートを作成して、毎日チェックしましょう。
チェックシートは全員で一つの表に書き込む形がよいでしょう。
二か月ほど続けると、その行動が「やらないと気持ち悪い」感覚になります。
もし継続できなければ、行動のハードルを下げるか、忘れないような仕組みを作りましょう。
習慣化のポイント
行動を習慣化するには、同じ行動を身体(脳)が覚えるまで、一定期間続けなければいけません。
しかし、人間の意志は弱いので、すぐに「面倒」だと感じてしまいます。
それを克服するには工夫やアイデアが必要です。
自然に行動するような工夫や、定期的に集まったり、お互いにチェックできるような仕組みづくりが必要です。
こういったアイデアを考えること自体が改善活動であり、5S活動だと言えます。
まずは簡単なことからでも、続けられる仕組みを作ってみましょう。
5S活動が社員の躾になる理由
5S活動は、整理・整頓・清掃を行い、会社をより働きやすい環境にしていくものですが、その根幹にあるのは「ルールを決めて必ず守ること」です。
整理とは、モノを分類して要らないモノを処分することですが、5Sで大事なのは、その状態を維持できるようにすること。
5Sの整頓はモノが使いやすく配置することではなく、使ったら必ず戻せるようにすること。
そして清掃も綺麗にすることではなく、その状態を維持できるようにすること。
一定の状態を維持するには、必ずルールが必要で、そのルールを守っていくことが必要になります。
「ルールを決めて守る」ということを継続することが、環境を改善し、ルールを守れる風土、つまり社員の躾に繋がっていくのです。
冒頭でも書きましたが、5S活動は継続していく過程で少しずつ自然に変化が起こり、気づけば会社全体の風土が変わっています。